「最近やたら眠気が早々と落ちる」
独り言のように呟いて風呂に入ると立ち上がった川本はそのまま戻ってこない。山岡は、それを気にするでもなくこの時ばかりと時間をかけて削り尖らせた枝に肉の塊を差し込み、炙って焼き上がったところへチーズをのせ坂上に渡してから、手の甲に垂れた汁を妙に赤い舌で舐めとりグラスを呷った。
炎の中で枝が小さくはじけた後、昼間は聴こえることのない、ここからは離れているはずのせせらぎの音が冷気を纏い落葉を震わせ弱く地面を這って来る。坂上は受け取った枝付き肉を持ったまま襟を立てた。十五年か。
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