晨明粉の雪が降り積もりおかしなもので凍地に軽やかさが戻ったと感じる。降るものが降らず溶解遅延の根雪は昼夜問わずに冷え冷えと白濁し辺りを静めていたので窓の内側では身動きを忍ぶ時間が長々と在った。外にでなかったわけではない。凍結面に足元を掬われジャリジャリと軋ませる徘徊は家の内に戻ってストーブで暖めても鎮静の余韻は消えなかった。唯あたりがふわりとしただけの瑣末な変化に誘われ腰に樏をさげ歩き出た頃になって地には吹けば飛ぶ粒子が舞い白く発光する陽射しが青碧の空にある。気温はむしろ低いのかもしれない。無論狩り採集をするとかクロスカントリーで汗を流すとか記録機材を持って観察をするとかの理由を当てはめる種類の移動誘惑ではない。目的のない散策にすぎないが夢遊病のような甘い行動だとどこか遠くから自身をみている。緑葉の鬱蒼とした季節にはなかなか足の届かなかった場所へ辿る事ができるだろう。とは言え自覚的に行方を測る気分ではなく気象気圧に促された気侭なものでよかった。数十年前には薄ばかりだったと聞いた最近は大掛かりな間伐も行われている唐松植林の比較的凹凸の少ない地は臑程度までの粉末を蹴ってすすむことができたが軈て植林境界を踏み越え、やや勾配が目前に迫るようになり、空間を遮っていた葉が落ち奥行きが透き通って見通しのよくなった枯枝が、大地の繊毛と化した原生照葉樹の森へ入ると積雪量が増え、途端に雪に隠された深みに太腿まで踏み落としてから慌てて樏を長靴に取り付ける。浮ついた歩みなったのはいいが斜度のある昇りのせいか長靴の中の靴下が脱げかけるので、その度に手を差し入れて踵の下から引きあげる。靴の中踝あたりまでの浅いものを履いたからか同じことが幾度も繰りかえされるので小さな平坦をみつけると到頭どっかり雪面に深々と腰を降ろし、湯気のあがる両足を抜き脇の雪を掴んで口に含んだ。正午前淡く残って流れていた雲が消え上空の深さが見えぬほど一色にて晴れている。一昨年の大雪と異なりエルニーニョの影響で積雪の量が減ったらしいがそれでも標高千数百メートルを越えれば零下の大気は地の隆起の突端から舐め下ろすように降ったものを幾層にも絡めて山裾野の東側へ貼つけているので、腰迄粉の中というわけではない。降ったばかりの粉雪は凍てついた地へと柔らかくこちらを導く効果を示しているのであって、これまでを覆い隠すわけではないと判る。 » Read the rest of this entry «
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