prologue


危ういぞ。と声にしたけれども、戒めの念は残らなかった。
その軽足で、転がりつづけたとして、と、何も見えない。見えるような予感は惨いような棄ててしまった若さだとも思った。

ポケットから記憶にないキャンディーをつまみ、おもちゃのような音をたてて包み紙を広げ、真っ赤な玉を口に放り込んだ。
いきなり噛み砕き、小さな破片が奥歯のどこかに挟まった。ずっと舐めるなんてできないと、妙な捨て台詞を唾してから、肩を預けていた左の塀を右手で突いて、身体を左右に揺らすように歩き始めた。

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