二十五万年前から五万年の間緩慢に繰り返された複式火山であるから外輪と内側があり、西と東を両手で囲む格好で窪んでいるが、他の鮮明顕著なカルデラに比べればおそらく永きに渡る乱発噴出の時間が挟まれたかして都度の崩壊も加わりほんのりとしたものだ。二千メートルにやや足りない標高の頂が転々と登山道を結び、気象に恵まれれば眺望は八方に伸びるのでその景を求め登山する者は多くはないが絶えることはない。西側の噴火より随分前にマグマの貫入を受けて隆起した変成岩盤の壁が、人史のあけぼのより地勢的な威容もあって人気(ひとけ)を呼び寄せた。けれども東へのぼってから分かるこの窪みに現在は、山林を管理する者や狩猟程度の男たちが時折通り過ぎるだけで道もなく、外輪の南や東の斜面には在る間伐の手も、この窪みに至っていない。縁は南から北へ柔らかく伸びる稜線を形成して、眺め仰ぐ位置と距離によってはその山稜景は随分印象が異なる。東から眺めては横臥の姿態と重ねることがある。幾度も加算された複式のせいだろうおそらく地下には繰り返しつきぬけたマグマの錯綜痕があって他の類似態と同様、降り注がれたものを吸って溜め込み、リモナイト層で浄化されスカートの裾へと湧き出す。類型山が北に向かって三つ並んでおり、標高差千メートルの隆起の外東側に湖と池が点在する。 » Read the rest of this entry «
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