ゆっくりと徐々に小さく消えてしまってから一旦時を止めてゼロからはじめる緩慢さで繰り返される細い寝息が、夕陽を透かした髪の奥を白く発光させる脰から、喩えるもののない形状で隆起して連なる肩へ、そして肘までの柔らかい稜線と背の膨らみの幽かな微動とがややズレて、吐息という言葉そのものになる。自身の軀では命の肉袋とは気づかなかった。全く異なった意味と価値で存在しているかの淡い皮膚を持つモノの柔らかさが色彩となって見えていると男はこの時思う。指先で軀の輪郭を辿るように薄く触れてこそ生まれる儚さへの官能が指と皮膚の隙間に迷うように浮遊してから灯り、首筋の青く透き通る静脈をやや圧迫すると長い吐息が切断されたかに停止し、頚に走った捩れが律動し小さな呻きが漏れたようだった。肩の後ろに耳をあてると呼気の名残が血流と混じるように弱いけれども透明で硬質な器に変える速度となって鼓膜にぶるんと震えて届く。 » Read the rest of this entry «
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