隆起硬化の大いなる静まりがまず悠々と在り、その決壊をある時一粒の雨水か垂直に走った稲光かがそっと促し、谷の木霊を全て潰す魁偉な音波を地へ差し底へ崩落した重量が始まりには勝り、流れに抗う態の頓無く過ごした膠着を塊自体内側の質に滴り沈下させたのは、幾度も根付いた樹木を振り払いあるいは媚びるかに寄生割礼されるがままだったからで、やがて風雨雪や併置類型の倏忽激突も加わり自らを理へ粉々放り下った千荊万棘回転研磨のこれまた長い想像の届かない運動の時を経て大海の波に揉まれて打ち上げられる。否その中途でもある揚句の偶さか、ヒトの掌に乗るこの星の相似態と成った石ころを浜辺で拾う。男は季節を測る時を擱き、風の吹く日に山の縁を渡って一昼夜走るように歩き降り、過去より幻妖色が祭儀に使われた結晶の転がる海岸に着くとそれら貫入の果てには見向きもせず遠い街の蜃気楼も朧のまま眺めから捨て去って首を垂れたまま崩壊の砂中に立ち海辺に暫くは野営する覚悟で切り立ったあの谷の断崖絶壁を忘れない。半年前に手にした萎れた蔦が千切れ谷の流れに身を滑落させ流れの底の岩刃で傷を負い再び潜って砕けたままの硝子のような粉砕岩の光景を前にして時を掴むという言葉が男に生まれたのだった。 » Read the rest of this entry «
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