猛禽か齧歯か、与り知らぬ小天狗道化の嘲笑を体に纏う輩が滑空した大気痕を斜めに追って顎を突き出し、枝間を睨みあげた眉の形を崩さず前のめりの格好のまま進む。というのも闇の中焚火炎に照らされ、また溜りの月光反射に咽ぶ彼らの飛翔に気づく度ちぃと舌を鳴らしていた。小憎らしい奴らの宙空へ遺した手を伸ばすと掴めそうで届かない飛行景を夢の中で「下ではなく上へ」と諭されるかに幾度か喉を反らして巡らせていたので、痕跡が結ばれる樹々の間隔と高低差をぬんと繋ぐ目付きとへの字に曲がった唇の形はいつまでも消えない。猛禽はまだしも齧歯のふざけた肢体のまま落下の速度で真横に流れることが気に触る。彼の目玉に乗り移ることのできない今世の軀のつくりが怨めしいのか。狐狸の徘徊には別段思いは膨れない。なにしろ宙空を浮遊したことなどないくせに夢のつづきでふわりと浮かび泳ぎこうだったのかと浮遊法の取得を歓ぶ束の間の錯覚の喘ぎが覚醒後も消えないからだと思われる。現在を切り裂いて「みえること」を遠く高く放り上げる手がかりが彼ら飛行類にある。錯乱に似た息を吐くこちらに出会うものは人間であっても魑魅魍魎であっても目玉が互い違いに上と下へ向けた気の振れた生き物と突き放し関わりを背けるだろう。 » Read the rest of this entry «
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