日曜日の午前だったが取り付けた工作機械の稼働の様子を最初の段階で直に確認しておく必要があり、社長から申し訳ないと頭を下がられていたが、いえ休みなんて寝ているだけですからと、坂本本人も、以前の事故の責任を感じていたので、快く引き受け、若い社員には家族サービスしろと肩を叩いて、土曜の搬入も遅くまでひとりで業者に付き合い、明日もよろしく頼みますと、業者にむかって社長の真似をしていた。
昼前にはテスト稼働のチェックが終わり、工場倉庫の鍵を閉め、昼飯はこってりとしたものでも喰うかとよく晴れた空を見上げていた。この時は鮮明に覚えている。
夕方、坂道を足を引きずって歩いているところを、買い物に出た小和村の東城夫婦が軽トラを止めて荷台に乗るよう促し、街まで下ってどうしましたと若そうな警邏ひとりの交番で夫妻がとりあえず緊急医を尋ね、到着した救急車に三人に支えられるようにして乗り換えて、赤十字病院と向かった。
左足首を捻挫し、胸を殴打した内出血があり、持ち物はズボンのポケットにハイライトとライターしかなかった。顳顬から流れた血液が乾いていたので、医者はレントゲンを撮影しましょうと、頭の心配をした。
月曜日の朝、病院のベッドの上で目を覚まし、軽いものを喰いながら自分の身体の痛みの疼く場所を何カ所か確認し、ここではじめて昨日のことを振り返ろうとしたが、昼前の見上げた空しか浮かんでこない。横のテーブルの上にあったハイライトを掴み、ベッドの脇に添えられてあった松葉杖を使って喫煙室を探し、結局受付の外の喫煙所と書かれたベンチに座って一服した時に、向こうから会社の連中が数人歩いてくるのが見えた。