ヤマダ

5月 28th, 2008 ヤマダ はコメントを受け付けていません

列車から見える水平な広がりがいつになく妙に心地よいので、そういえば仕事の空間は垂直に幾重も交錯した構造だから、始終顎を上下している。数日前はエレベーターに20分閉じ込められ、見知らぬ男と意味ないなじりあいに発展していた。振り返って目の前を失いそうになり、慌てて窓に額を近づけた。よくみれば田に水が入れられ苗を落とす間際の反射面がひたすら続いている。偶然に田植え前の水平面が空間の広がりを加速させたのだとヤマダは、府に落ちた。
妙な時に呼び出されたと煩く思って断りの電話をすると、相手構わぬ断定的な言葉を短く閉じ、暫く空白を挟む。相変わらずの声の、例の空白に切迫感があって、結局こちらから了解の返事を返していた。
こうした機会がなかったせいで、日々のニヤケタ仕事にじっとりまみれ、思い返すとまる2年、故郷に顔を出していない。ついでというのはうしろめたかったが、先祖の墓参りもしようと決めた。

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