最近にしては、早起きして辺りを軽く走り軽めの朝食も旨かったと一日を頗る健やかにはじめている顔つきだったので、青木はその青年がまず珍しく、身なりを下から上へと相手が嫌がるような目付きで眺めてから、全く利己的に無根拠な親しみを持った。
単に健康というのと違うな、年齢は二十代後半だと思うが、赤ん坊のような殻を剥いたばかりのゆで卵な顔をして、奴には刑務所から勤めを終えてシャバに出てきたような晴れやかさがあったよ。
青木は同僚に話す酒の席で後になって振り返った時、鏡に映る自分の表情こそ、罪を犯したもののそれだよと、ひとり呟いていた。
若い男は、コンビニで言いがかりをつけられ、逆に相手の頭にビール瓶を打ち付けて倒し、全治2週間の大怪我をさせ警察で事情聴取を受け、正当防衛だったが手を出したほうの親に訴えられ、事情を知る警察の担当者はそれに同情したが、怪我が頭蓋を割るほどだったので、塩らしくひたすら項垂れていたようだったという。
俺だったらやられるばかりだったろうに。と青木は青年に慰めの言葉をかけたが、慰めというより羨望の気持ちが強かった。青年も思いがけない反応をして、あれで殺していたら、ボクはどうなっていたんでしょうねぇと人ごとのようなことをつぶやいた。
青年は青木の仕事場に勤め始めてまだ一ヶ月も経っていない新米で、他所からの転職と聞いていたが、目立つ性格でもなく、普段は大人しい静かな人間と見ていた。
青木
5月 28th, 2008 青木 はコメントを受け付けていません