ペットボトル

5月 26th, 2008 ペットボトル はコメントを受け付けていません

男が少し前に空になったリュックを投げ捨てたのは、リュックという道具自体にどこかしがみついている気がしたからだったが、水の入ったペットボトルは手放すことはできなかった。
泥に膝まで埋まり、枝で頬を切り、流れ出た血液は、興奮で凝固していた。それでも男は歩みを止めようとしなかった。
ふいに目の前が明るく開け、円形に樹木が喪失した空間が顕われた。至るところに動物の屍が転がっているのを目にすると、此処が終点であると男は悟り、中央に歩み出て、ペットボトルの残りの水を地面に流し落としてから、ゆっくりと横たわった。

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