ヤマウエの動態マップ

5月 10th, 2008 ヤマウエの動態マップ はコメントを受け付けていません

発生熱36°以上の動態に対してマーキングし、静止態に対しては、アーカイブデータとの相対解釈によって、建造物の反射熱の場合は熱の差異を記録してマーキングから削除し、熱変化のない静止態の温度差を色分けするデータで蓄積した。簡単に云えばこれだけのことだが、ヤマウエの卒論に、このデータをグーグルマップにリンクさせ、少なくとも6ヶ月はデータ処理をしなくては、地表に新しい地図は描けないと見込んで、夏から地味な作業反復に精を出していた。

ヤマウエは、衛星にハッキングできることを知り、様々な衛星の機能が、実は公示されているものより、数段複雑な処理能力を持っており、軍事的、政治的に利用されている実態を、数年に渡って調べてきたが、これは彼の覗き趣味が高じた結果であった。それ以前は、引っ越しのアルバイトなどの際に、見知らぬ家々に盗聴器や、盗撮用小型カメラを仕込み、気の向いた時にデータを収集し、密かに一人で楽しんでいたが、あまりにその盗んだ内容の凡庸さに飽きてしまいやがてやめた。

ヤマウエは地図制作の歴史の学習をはじめた。20世紀に入ってはじまったフォトリソグラフィーの技術により、地図をレイヤーに分割する1950年代のワシントン大学でのレポートを読み、1967年に、カナダのオンタリオ州オッタワで開発された世界で初めて動作可能な地理情報CGISシステムの初期、あるいは、ESRI、MapInfo、CARISなどがCGISの機能を取り込み、空間情報と属性情報を分離し、属性情報をデータベースの形式で管理する形態の地理情報システムの詳細を夢中で読んだ。似たシステムをこの国でも、1970年後半から研究が始まっていたことをなどを学習した。

時間差はあるが惑星上の全ての地域の静止画像が利用できるようになった時、ヤマウエはビデオカメラ動画の局所的利用よりも、トータルな惑星データとして、動くものをマップマーキングすることを思いついたのだった。時間はかかるが、情報化されていない動きが例えば、海中にもみつかるかもしれないが、衛星デバイスの機能に限界がある為、諦めないといけない項目はかなりの量になった。

秋が終わり、冬らしい木枯らしにコートの襟を立て、息も白くなる夕刻を迎える時期となって、ストックデータの統合処理を拡張したPCを連結させてはじめたヤマウエは、その当初から、モニターに現れる妙な形態の動きに首を傾げていた。
大きな白い綿布を研究室に張り、投影画面を拡大し、この惑星のマップデータのアーカイブがモーショングラフィックで動態移動が光線の束となって、タイムラインによって移動反復が美しく描き出された。

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