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11月 26th, 2007 search はコメントを受け付けていません

ボンネットに落ちる雨音が止まった。フロントガラスに明滅していた小さな水の花火は消え、流れの筋が白みかえた景色をその幅だけクリアに垣間見せた。
冷えたバーガーを喉へ押し込み、ペプシで流し込む。
とりあえず身体を動かせる為で味など無かったが、顎を動かし続けた。助手席の足下には、2日分の補給で放り捨てた空のペットボトルとハンバーガーの包装紙が重なり、そこへビリビリと振動が伝わる携帯を拾い上げると、メールと着信履歴が同一名で累々と並んでいる。閉じて再びゴミの下へ戻す。幾度か咳がでた。
フロントミラーを手前に曲げ、ハンバーガーのケチャップがついた髭と顎を指で擦り、リアガラスに映り込んだヘッドライトの破片が瞼に飛び込み、眉間の間を指で押さえて弱く緩慢に続く頭痛を堪えた。
2センチほど開けた窓の隙間にクチビルを尖らせて近寄せ、白みかけた外気を縮んだ肺に吸い込んだ。
田舎の梅漬けのような香りが少しした。


美食とかグルメとか言って、デロデロのぬらりひょんなものばかり喰っているから、最近の女なんぞ、顎がこう細くなっちまって、ベロばかりでかくなっちまって。UFOに乗って飛んでっちまえってんでぇ。
あたしゃ戌年だから、バリバリ音が脳天まで響くような骨っぽいものが大好物なんだが、そんなもの歯に挟まるだとか、卑しいだとか、獣呼ばわれされちまいましてぇ、獣って言われてみればそのとおりでございますが、わけわかんないよぅ〜

ラジオから鮮明に、若い噺家だろうか、DJの声がふいに聴こえてきて、先ほどまではそういえばオーケストラが弱く鳴っていたような気もした。
ワイパーでフロントガラスの筋を拭ってから、脇の携帯双眼鏡を手に取って覗き込み、相変わらず閉まったままの、50メートル程先のマンションの地下駐車場を確認してから、5Fの角部屋の窓へ垂直に覗き穴を上にスライドさせた。
「かわりなし。わけわかんないよぉ〜」
と呟いた。

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