口元に落ちた水滴をゆっくり舐めて目が覚め、まだ生きているのだと思った。懸命に仮設した雪の祠が溶け始めていた。顳顬から脳天にむかってズキズキと痛み、それが凍傷であるとわかるまで頭を何度も振っていた。ビニール袋を体に巻き付けシェラフに体を密封し、死ぬかもしれないのだからと、何度も南の島の女を浮かべて自慰にふけって意識を失ったのだと数時間前が浮かんだ。
手袋の中の指を動かし、内側に折れたままの足の指を、皮膚を擦りつつゆっくり外側へひとつづつ曲げると、肩口の黒い滲みと痛みが広がり、転落した時に貫いた穴の傷と、弱い記憶が巡った。
下半身は凍り付いたようであったが、ふくらはぎに貼付けた使い捨てカイロの御陰だろう、血は巡っている。
雪から這い出ると、目の前には真っ白な丘と快晴の蒼天が広がり、身体から垂直に蒸気が上昇した。
眼下に見える樹々のある所迄歩いて、焚き火をこしらえなければいけないと思った。
バックパックを背負うと、身体の数カ所に痛みが走った。腰迄埋まる雪上を歩くのに手間取りながら、痛みと共に新しく吹き出してくる傷口の血の香りに、生存への意欲が湧くのが不思議だった。
血とともに全身を流れ落ちる汗が、凍った身体を自力で暖めたが、この汗が急速に再び身体を冷やすことが怖かった。
枝に残った葉を毟って口に入れ、握った雪片と共に飲み下した。見上げると真上の太陽を鷹がピーと鳴いてあたりを切り裂くように、滑空していく。
この時、海辺迄歩いて、仕事を探そうと決めていた。
He awoke slowly licking the drop of water that had fallen into the mouth.
設定
近未来設定:傭兵装備、壊れた生命維持バックパック装備、武器携帯、衣装デザイン、時代背景設定必要。
シークエンスで示す事:
バックパック、デバイス類により、近未来であることを示唆。
事故、あるいは事件により、冬山にて遭難。一晩を生き延びたことを示唆。
特殊部隊、あるいは傭兵などの、ミッション当事者であることを装備にて示唆。装備は不完全。(雪山装備ではない)
負傷が、落下事故か、狙撃による銃創であるかを特定せず。
タフな設定であるが、それを考慮しても、かなりの疲弊を示す。
時間とともに進行する蘇生感と、平行して、自らの置かれた立場からの離脱感、逃走感を示唆。(武器・装備の放棄なども)
雪山の景色が徹底的に圧倒的であること。(日本に限定せずカナダとか森林のある雪山)
PDW(Personal Defense Weapon):FN P90
参考:5分後の世界/村上龍
cast:ワッキー(ペナルティー)
soundtrack:
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