場霊唆
父の日と誕生日を合わせた娘らからのプレゼントの、割と高かったとハンズのシールのあるひげ剃りブラシを有り難く机に掲げて、里奈が居眠りをしている横でハルボウのラップトップの文字化けなどを弄ってから、長女の内定祝いをトリトンにて行う。
時人空
坂中トンネルを抜けて牟礼から黒姫までまっすぐふたつの峠を越え、信濃町で国道に入って久しぶりの野尻湖を右折して左回りにゆっくり走り、一度目的の場所を通り過ぎてから戻り、このあたりか。斜めに駆け上がる坂道を頂上まで上り、建物の形を確認しつつ下り始めた右手に唐突に探していた物件が目にはいった。うーん。一昔前の別荘開発地の一角で、冬は厳しい。アプローチがかなり急な坂道で冬場は使い物にならない可能性がある。 […]
検証地
年齢の割に日々行事や寄り合いや用事があり、それになるべく断らずに参加出席することは老化の防止に役立っていると自負する父親は、週に一度は書道を教える教室に車ででかけ、なにかにつけ外に出たがる母親も、父親をお抱え運転手と頼むので、実家にいると運転手の役割がこちらに回ってきて、この時とばかり父親は書斎兼書の制作部屋に引き蘢る。こちらは父親の車をその度に借りるよと両親のスケジュールを確認しながら動かざるを […]
測躯異
思い返せば、家族が増え車を使う都合が優先したせいでバイクにはカバーを被せたままの状態がはじまった。数年前に車検を通したが、これも少々走らせただけで、あっという間に車検は切れた。その後税金だけ毎年支払う状態が続いた。そもそもこちらにここ数年まったく時間がなかった。ようやく時間ができたというわけではない。
脱情動
もともとエモーショナルというアプローチ、考え方が気に入らない。最近は目利きもそれなりに備わったので、匂い立つ情動には、発作的にぷいと顔を背けているようだ。 繊細なもてなしをストレスと喜びの天秤にかけるお客様相手の社会に生きてこなかったせいだから仕方ない。 だが、ふと気を許すと、感情的な情動が隣に座り込む。うるせえと怒鳴るわけではないが、もうあやしつける子供じゃねえんだから放っておいてもらいたい。と […]
狼馬倫
早朝まで「越境」をベッドで長々と捲りつづける。映像では無理だろう。小説でのみ可能な空間に痺れるように引きずられる。不思議なことにどこか記憶が重なるような感情がそこにあった。Cormac McCarthy の抑制がとても好ましいし、彼の手法(姿の無い時の同行者のようなまなざし)が痛いように理解できる。
驢馬軸
放置状態だったSR400を査定し、大枚はたいて車検を通し復帰させるくらいならと下取りに出して、YAMAHA Tricker 250 の中古を探してもらう。新車はあまりにその輝き自体が恥ずかしいし、インジェクションの新型もアホ臭いのでやめて、丁度店頭にあったタイトなプロダクトの初期型(キャブ)を、多少弄ってあるけれど、これでいいかなと選ぶ。
遺集離
通夜から二日泊まり込んで、人のいなくなった朝、遺された家族と朝食をいただき、取り外した襖はこちらが乾燥室に仕舞っていたから元に戻す手伝いだけして、放心が見て取れる表情で見送られ車に乗った。途中、高地の森と湿地の前でカメラを向けてから実家に戻り、風呂を浴び髭を剃った。
折人枝
そういうことじゃねえな。プロダクトの制作に不満があって、土壷の中もう少し踏ん張ってからにしようと思ったが、曖昧な不満の正体を車窓の向こうに探そうかと列車に飛び乗り、雨に濡れた平野からトンネルを越えると軽井沢は指の先が消えるような深い霧に覆われている。上田あたりから少し空が見え若い緑が際立つ。夕刻の長野に降り立つとタイムスリップしたような冷気があった。
査行究
schedule memo / may,2011 Two solar – 断章の併置(固有名の連結)から連想構想の拡張(ふたつの太陽:仮題)/ 記述継続構造の調整 investigation of self-destructive behaviour – 「自傷・自滅型」思考・思想傾向の「併置景の展開」検証 return position from branching pr […]