早朝まで「越境」をベッドで長々と捲りつづける。映像では無理だろう。小説でのみ可能な空間に痺れるように引きずられる。不思議なことにどこか記憶が重なるような感情がそこにあった。Cormac McCarthy の抑制がとても好ましいし、彼の手法(姿の無い時の同行者のようなまなざし)が痛いように理解できる。

こちらの示した住所ではなかったと下取り廃車手続きを代行してもらっている担当から電話があり、SRの登録が、所帯を持ったばかりの住所と気づき、既にその詳細をすっぽり忘れていたので、実家の住所録を探ると、ああこれだといかにも若い新婚の所帯と示す住所にどっと記憶が現れた。数えると、あれから三カ所を移動し、それまでを振り返ると、七カ所が憶いだされた。内ニカ所は、ベルリンの郊外と市街地のゲイの男の部屋が含まれる。犬を飼っていた男のベッドで寝転んでマーカーのキャップを外しドイツ語を学んだままねむりこけて黄色いシミをつくってしまった。男はクリーニングで落ちるとさして怒らなかった。東京の赤羽の外大に行っていた従兄弟の隣の三畳の部屋で膝を曲げて半年を過ごし、板橋の精肉工場の横の真四角の部屋で一年半過ごした。今思えば長女の年齢だった。八王子郊外の狭いアパートから子安坂上の古いアパートへ移り猫を飼った。その後、豊田の建設会社の三階に移動した。その後、渡欧し、戻って長野にて所帯を持った。

ミラノのツルタから、向こうで知り合った韓国人の女性と秋に結婚するので、出席してくれとメールがあり喜ぶ。先日加藤の赤ん坊を抱いたばかりでもあり、ひしひしと年齢を感じるけれども、そういった実感に逆らうように、納車手続きをしたtrickerを、再度確認に行くと、新型の新車が置かれてあり、ピカピカのそれと比べて、やはり選んだもので間違いなかったとほっとするのだった。しかし、丁度梅雨がはじまると、店の人と笑う。獣の瞳をみつめるためにサファリパークに行きたくなったが、パークには獣はいないか。

appleから、叔父たちに送付する約束の、5月13日通夜からの記録編集したBook5冊が届き、今回はソフトカバーだったので検証すると仕立ても印刷も悪くないので、この仕様で、編集済みの作品Bookを発注することにする。
使ったことなどなかったが、どうしても処理フォーマットに従う必要があると請求された社印をネットで発注し、それをポンと押して書類再送。あらゆる局面での、手書きサインのリアリティーの無さは、イコール個人を必要としていないということ。いつになっても、誰の為かわからぬが印鑑、判子のほうが大切らしい。