method

廃墟のような美術館にて

体育館のような高さと広さはあるが、壁に罅がはいり、いたるところに蜘蛛の巣もあり、廃墟かと思ったが、女性の学芸員が自分の部屋迄手招きした。屋根裏のような印象の室内には書類が乱雑に積み重なり、彼女の独り住まいを連想させた。 「光の柱、つまり映像の柱よ。欲しいのは」 だされた珈琲カップの縁が割れていた。こちらもいっそ廃墟でもよいと思い始めていた。表象は人間の手元に届く形に縛られているので限定的な時空が必 […]

眺めを戻して

日帰り出張で撮影の仕事があり、新大阪から御堂筋線で淀屋橋にて京阪電鉄TV車両に乗車し、枚方(ひらかた)にて交野(かたの)線に乗り換え、大阪と京都のほぼ真ん中に位置する交野駅にて下車。帰りは郡津(こうづ)駅まで歩き、同じ乗り換えで戻り、新幹線で駅弁を喰って眠りに落ちていた。 父親の精密検査の結果を電話で確かめ、いざと云うときはそのまま長野に戻るつもりだったが、呑気そうな声を聴いてほっとする。東京に戻 […]

ポジ

2年前に狭いオフィス開設時に持ち込みを断念し積み上げたまま、時間の折り合いがつかず放置していた15年分のポジフィルムやカセットテープなど入れた箱を開き、隙間に入れていた、手に取ると思いがけない過去が蘇る雑貨の類いも、ひとつひとつ手に取り、名刺や年賀状等は残すようにして、他は分別ゴミ袋に投げ込み、書類の類いも一応目を通し、現在の捉えに残ったエスキスなどは別に纏め、いらぬものを紙のリサイクルとして紐で […]

ファインダーと網膜

速読の癒しを緊迫し凝り固まった観念に与えるために、予感があって持参していたタルタロスの審問官 / フランク・ティリエ(1973~)(七匹の蛾が鳴く)の古くさい翻訳にいささか辟易しつつ、読み終えて死者の部屋を注文。若手の作家だけあって複雑なプロットをダイナミックに牽引展開する力はあるが、主犯の人格設定に説明の足りなさがある。コミセールの一人称で語られる文体にいささか勇足もあったが、これは作家の若さ故 […]

光景・風景・現実

ーたとえば、シクロフスキーは、リアリズムの本質は非親和化にあるという。つまり、見なれているために実は見ていないものを見させることである。したがって、リアリズムに一定の方法はない。それは、親和的なものをつねに非親和化しつづけるたえまない過程にほかならない。この意味では、いわゆる反リアリズム、たとえばカフカの作品もリアリズムに属する。リアリズムとは、たんに風景を描くのではなく、つねに風景を創出しなけれ […]

決壊

週末に上下を読了。このボリュームに対する速読感は他に無い。手法的にはテーマよりも、この速読させる文体の技術を評価すべき。テーマ的にも、トータルな意味での時代観が余すところなく掬われていることも、最近感じていた眺めの質と近いものがあった。2006年11月から2008年3月までの連載であるから、最近の事件に少なからず影響を与えていると思われるほど、構造的な現実感がある。(件の秋葉原の犯人らが読んでいた […]

Pedro Costa

ー 前作「溶岩の家」の舞台となったカーポ・ヴェルデやサラザール政権時代に、ポルトガルの植民地であったモザンピークからの移民たちが数多く住むリスボン郊外のスラム街フォンタイーニャス地区を訪ねた監督本人が、ヴァンダ・ドゥアルテをはじめとする実際にこの地区に住む人々に出演を依頼して撮影した。極端に貧しい生活を送る人々の存在感、彼等がつねに壁に寄りかかっている狭い路地の空間への配慮が何よりも強烈であり、前 […]

static-photo

ushiyamaのここ数年の作品のコンテクストを眺めて生まれた言葉を再び憶い出し、ミラノのtsurutaにメールすると、最近の写真をアップしましたと元気そうなレスが返ってきた。gentaは沖縄のロケハンから戻ったようで、GRのスナップをアップするとのこと。待ち遠しい。 一枚の静的な写真の成立を、「世界との出会い」といったどこにでもある標準的な、カメラに牽引される趣味的立場から、逆説的に普遍世界を構 […]

メソド

同時に並行して処理を任せられるPCは便利だが、私の場合この処理は事後的なものがほとんどで、個別の処理に時間がかかり、且つそうした累積を扱う場合、個別処理毎に手を差し伸べなければならないので、その総体時間自体に振り回されることになり(フルオートマチックとはいかないので)、PCに任せた時間を自由に使えるわけではなく、ひたすら苛立つ。この業務の時間をなかなかまとまって作ることができないのだが、納品を先延 […]

咀嚼

ー新しい体験を描き出すこと、これが現代作家の欲求であり、また、存在の理由でもある。自分の現に住む世界の中で人間的に不可能だとされているものを、なおかつ人間的な体験として描いてみること、また、ただ異常な出来事として精神の外におかれているものを内面的なもので満たしてみること、そのような試みへの衝動に責められていない作家は、現代作家として評価されるべきでない。真に現代作家らしいものをあたえるのは、熱狂的 […]

老人と宇宙

をラムラの書店で見つけた。John Scalzi : 1969年生まれの作家の世代感覚と、プロットのモジュール感覚に惹かれて、明らかに「The Old Man and the Sea」Ernest Miller Hemingway(1899~1961)へのオマージュであろうことも勝手に重ねた。 The Silence of the Lambs / Thomas Harris(1940~)などに始ま […]

位相差

訪れた場所の画像を整理して休日を過ごし、フィジカルな残滓(肉の痺れ)と画像から見出される別のものを残されたイメージから眺めとるという、異なった位相を重ね合わせる差異の場所に居る感覚を味わう。 00door / 00door2 移動と撮影と同時に持ち込んでいたMR-1での採録を元に、新しい音響を時間をかけて行うことにする。 旅のあれこれは別記するとして、この移動の間考えていたことはやはり遺すべき「イ […]