day

懸念子

実は、ぱらぱらと種を播くときのように、問題部位から、癌細胞が周囲にまき散らされて起こる腹膜播種転移からのアルブミン低下、腹水増化により内蔵が圧迫されたのではないか。 妹とふたりで病院の、単なる数値から判断した栄養不足と記載されたものを睨んで、時間の経過を危ぶんだ。
占地葡

占地葡

オサメの母上より庭に自生したという野生のシメジを頂き、このところ幾度も頂き物があったので取材近隣の岩崎にてパンを御礼としてオサメに渡す。

血糞譚

金曜日の夜自分で服を捲り上げ膨れた腹をほらとみせていた父親は、東京から戻った土曜日の夜中にはベッドで寝入っていたが、どうも様子がおかしいと家族でひそひそ話し込んだ。翌朝に血便を垂らし、慌てた母親が病院へ駆け込み、担当の医師が父親の肛門に指をいれると指先が血で赤く染まったという。母親は終日緊急治療室の狭いベッドで付き添い、夜半から妹が朝まで隣のベッドで眠り、早朝義弟の車で送ってもらった母親と交代。月 […]

静寒音

片付けに追われベッドにもぐったのは午前2時を過ぎていた。マッカーシーの続きは3pほどだったか。枕元の灯りを点けたまま8時間も熟睡していた。ベッドから降ろした素足が床にひんやりと冷たく片手で覗くようにカーテンを九の字に分けて窓の外を見ると霧にむせた雨が降っている。インスタントの珈琲を左手で持ったまま移動して飲みつつ右手で洗濯機に洗いものを放り投げ暖房をつけるのをやめ風呂を沸かす。

吸地水

プールの上の2Fに素晴らしいマシーンの揃ったジムがあり、泳ぐ前に見学して、11月からプールがメンテナンスとなるので、こちらで汗を流すことに決める。
地膝浮

地膝浮

三本松のコメリで手斧を買ってから、握りに張り付いたシールを紙ヤスリで剥がしながら、その鬱陶しい時間のおかげで、そういえばアライから20年前に貰ったものがあったと憶いだす。どこかに仕舞ってある。

雨走針

昼間の仕事を引きずって夜中まで沼の底を探るのは、森の中では理不尽不毛であるとカラダでわかってきた。友人がくれば朝の4時まで酒は呑むが、平常11時になれば健やかな眠気も降りるようになった。 4時に目覚め、6時まで 下に降りてカウチに横になってagent 6 上を読み終えてから朝風呂に入り、下を貸してくれとメールをしてから、気づけば小雨の中パーカーを目深に被り走り出していた。

回場気

一回り歳の違う三十代の杜甫と四十代の李白は会って酒を呑んだ。「はなしの判る人間との惜別を惜しむ」酒の席が、李白の詩に残っている。彼らはそれ以降会っていない。なぜか車の中で父親に話しかけていた。内心五十代が八十代の人間に、この21世紀に於いて8世紀の話しをしている。ハンドルを回す隙間に、考えるでもなくやや健やかに思ったものだ。
伊蕎岩

伊蕎岩

先月結婚したツルタをイケダが連れてきたので、オサメを誘って中社へ蕎麦を喰いにいく。

骨父魚

二ヶ月が過ぎ、骨だけで動く躯となった父親が家に戻る途中の車の中で、娑婆はいいなと呟いた。
走加肉

走加肉

オサメがカナダ屋を予約してくれたので、夕方迎えに来てもらい、二人でガッツリ焼肉プレートを注文する。

髭白湯

新たな環境を生きる為の最後の必須アイテムである車を購入成約する。東北の震災の影響で納車が二ヶ月近く遅れると聞いた時には、どうしようか迷ったが、いろいろと考えて決めた車体だったので、構わないと頷いていた。