金曜日の夜自分で服を捲り上げ膨れた腹をほらとみせていた父親は、東京から戻った土曜日の夜中にはベッドで寝入っていたが、どうも様子がおかしいと家族でひそひそ話し込んだ。翌朝に血便を垂らし、慌てた母親が病院へ駆け込み、担当の医師が父親の肛門に指をいれると指先が血で赤く染まったという。母親は終日緊急治療室の狭いベッドで付き添い、夜半から妹が朝まで隣のベッドで眠り、早朝義弟の車で送ってもらった母親と交代。月曜日は浣腸を二度おこなって大腸の内視鏡検査をおこなったが異常はなかった。手術痕が裂けるなどしたか、わからないまま、検査を続けることになった父親は、二日間点滴のみでモノを喰っていないので、夜になって腹が減ったと繰り返した。どこにも痛みはないという。

水曜日に実家のふた親の寝室に地デジモニターを置く為のアンテナ線分配工事の現場下見と見積もりを業者に頼んでいた件を断り後日に順延し、父親の汚れ物を実家の洗濯機に入れてスイッチを押しわたしは仕事場へ戻る。一時は食欲も出た様子の父親は先週あたりからめっきり喰う量が減り、自身で固く張った腹を気にして戒めてモノを喰わずにいたようで、服用を指示されている消化促進薬も飲んでいなかったことが母親の話しからわかった。

月の頭より自分が何処に居て何をしているのかふと失念するほど業務や用事が交錯し、公私も混同する日々が続き、一件落着を小さく繰り返しては、また幾度かウヰスキーに手は伸びたが、翌朝に走ることは忘れなかった。現在抱えていることが両手の指の数あり、ひとつひとつ折って仕舞っていくことが容易くないので、一週間前までは午前零時前には眠りについていた生活が荒れ始めているのが悔しい。

だがそんな寒風の中、鳥のようにふっと舞い降りてきた素晴らしい検証と実現の行方の手法があり、そのエゴを棄てるための潔よさに充足することはできたが、これも周到な準備とテストが繰り返されなければならない種類のことであるので、性急さを戒めたい。

ヒトと会い、交錯する度に、倫理も研かれる感触がある。