反矩形
楕円(沼)に辿り着くことができないかもしれないとひとつ諦めた系をそれでも伸ばして組立て(積木)のジレンマも解けた性癖に促され片付けをしながら散らかし研きながら焚火で余計を焼いたりもして年の瀬の零下に悴んだ両手を擦り合わせる。想像力の行方を上下左右に広げたままの頭で湯槽の中朧な果てに視線を凝らそうとするが広がったものを纏めるような眼差しは容赦なく水に流すのだった。
境郭反復
十五年前の境界(輪郭)を巡るプランスケッチを振り返り、現在と照らし合わせるということを行う。「明快なブレ」のようなものごとの輪郭をズラした形象として繰り返されたものだが、今みれば2Dと3Dの狭間に居る居心地の悪さのようなものを感じる。だが当時も今もこうした考察は現実空間に投影する計画ではない。つまり「スケッチ」として記憶する為にあったように行われ現在もそう在る。 現実空間のアナログ展開として、 […]
前併置仕草
実際にその場その時に対峙しなければ皆目見当がつかないなりに準備はほぼできあがった。故に現時点で働く想像力は「その時」とは大きくずれたものにすぎない。こうしたことを弁えること自体が制作に投入されており、つまりこうしたズレを測る試みに没頭しているようなものだ。 時間の移ろいを加えれば、ほんの一ヶ月であっても変異している眺めの質からの枝行きにも同じことがいえる。 反復のない反復という苦し紛れのメソッ […]
秋夢雨
何もしない日、切迫の片付いた時間になかなか辿り着けない。けれどもどうやらそろそろそういう時節が近づいてはいる実感が睡眠の深さで判る。深さとはいってもほんの足首が浸かる程度だが、ゆで卵の殻が気持ちよく捲り取られたような青空を見上げた数日前にそんなことをおもった。
家識草
先がみえない長い串に刺さった団子はひとつづつ順番にしか喰えない。その愚鈍で併し喰うわけだった。辿り着いた大型の団子をよく見てみれば、思った以上に喰い甲斐がある。 簡単には手に出来ない「古木」という肌合いが色めき立つようだった。若干ナメていたこともある。成程「超現実」は妄想をいくらでもひっくり返す。部屋に置いたフィカス・バーガンディの存在の力にひとつもふたつもみっつ以上任せることに腹を決め、馴染 […]
雨夏終
折角刈り払った庭の草が雨の日々もあってか旺盛に伸びはじめた。あっという間に一週間が過ぎている。便座に座って関心や欲望が萎える時を浮かべてそろそろきそうかと訝る気持ちも大きくない。 「憤怒」ということは感情なのか、激烈な観念なのかと転がして、どちらにしても自らへしか戻らないことだと、さめざめとする。
保晰違和
幻影だった物語に近寄ることができる。あるいは逆様に現実の綻びをくっきりと炙り出したいという気持ちもある。枝からの派生ともいえるし「家」を扱う「手」ということになっていった経緯を救い上げる気持ちもある。
蜂草夏水
アシナガの巣はホースを伸ばして落として三夏夜テラスで快適に過ごしたが、突然キイロスズメバチが屋根の高所に巣をつくりはじめ、四回目に遊びに来た人間が刺されてしまい、この自治体で一人だけの名人に退治を依頼すると、諸処の事情を鑑みて秋まで我慢しなさいと云われる。来年は同じ場所に巣作りしないらしい。 エンジン式の草払機でおよそ一週間かけて庭の雑草を払い、その仕事がというより汗が軀の癖のようなものになり […]
大気層ノ奥行
気象に影響されている軀は生誕月のせいかと妖しいことを巡らせつつ窓の外の土砂降りの内側の静まり返った仕事部屋の床を拭く事で、どういうわけか穏やかに精神が癒されていく。忘れていた細かな気づき事に促されどうでもよい悉にこそ代謝が潜んでいる。酷使するわけでもない筆記具が机に並んでいるのを箱に仕舞ってから、横たえただけの万年筆の眺めから何かが立ち上がっていたことを知り、再び選んだものを並べてみるのだった。 […]