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木芽時

木芽時

 枕元で、ー まだ起きないよ。いいよ。いいよ。寝かせておいてやろう。ー と聴こえたが、瞼を開けることも身体を動かすこともできない。声が遠くへ離れながら、ーこんな時間だよ。ーと辿ってから、眠ってしまえと思った。
鯨腹ゼペット

鯨腹ゼペット

 「ネガティブ・ケイパビリティ」設置準備三日目で鯨の腹の中で作業するゼペット爺さんの心地を浮かべていた。
春魂振域

春魂振域

 制作の空間と併置の空間の差異を思い知るように設置を実に静かに淡々と行う。併置空間へ作品を持ち込んだ当初の俯瞰の眼でさてどうしようと途方に暮れたけれども、ひとつひとつの作品の成立の力(過ごした時間)に近づくことしか出来ぬから、それをするしかなかったが、それでよかったようだ。搬入と設置時に作品がふたつ壊れたので修復すると新しく気づくことがある。制作の実感、醍醐味、何を考えて作業しているのかを比較する […]
韻痕炭置

韻痕炭置

 観測という眼を意識し、「韻痕 Traces of rhyme 2」制作。1は、検証に4日時間費やす。この時間が継続を実質的に決定する。
裂枝空

裂枝空

 娘が一昨日も昨日もカレーだったというので、こしらえようと思っていたカレーライスをやめて、肉野菜炒めにした。夜行バスで早朝から終日滑って疲れた娘を寝床にやってから、どうしようか数日悩みつづけていた作業を行い、行ったからこそ判ることがある。  ひとつのささやかな現れが押し広げる思いがけない想像力の地平というものがあり、目の前に顕われる前には全く想定できなかったことが、殊の外面白い。目玉に事象が映り込 […]
膜蒔皮象

膜蒔皮象

地誇時間

地誇時間

 石川県の人口が約115万、金沢市の人口は、100万人の兵士を1年間食べさせていた加賀百万石の文脈を経て、現在約46万。戦争天災などの被災破壊を受けていない市街地は、勿論近代化されながらも、過去がその形象に焼きつけられている。北陸新幹線の開通で、市街には路面電車の開発の声があがっている。庇護の元育まれた伝統工芸の地にあって、盛んに先端の現代美術が企画されているその姿勢に学ぶものが多い。単に歴史に縋 […]
距時光年

距時光年

 光年=9.4605284 × 1015 m
数形往間

数形往間

 春の毒に充ちたものを喰って腹の中を吐き出して洗浄する獣たちを浮かべて、たしかに食欲の季節ではない。余白みたいな大気にあれこれ滲み出るから嗅覚が敏感になるように、視覚も尖ってくればよいが、知覚はひとつが突出すると他が萎えるのだろうか。
詩人齎睡眠

詩人齎睡眠

ー  風に乗っているというのでもなかった。はじめは交叉点の上をいっきに飛び抜けるいきおいを持っていた。交叉点では南の風が周囲のビルに乱され、瞬間毎に方向を変えていた。直進の信号が赤に変る直前の外側の車線に移り、西へ向う車の間にまぎれこんだ。ここからはしばらくその姿が見えない。強い排気に煽られたかどうかして、突然高度を取り戻した。デパートの配送のパネルトラックのスチールの角に触れそうになり(実際接触 […]
齢数近寄

齢数近寄

 一旦組み立て作業を片付けようとしていたが、積もったものを数えると年齢のようなものをあてはめる唐突な気持ちが浮かび(そもそも浮かんだのも、作業の手触りの残滓、余韻が不足不十分を訴えたのかもしれないし、木炭で行う作業になかなか入り込めない隙も生まれていた)、終わりのみえない書類整理の脇に座り込み、再び闇雲を取り戻すかの加減で自分の年齢の数だけと根拠のない拘りに取憑いてはじめていた。
半身投影

半身投影

 立ち上がって上半身を使う大きさの倍大MBM(660 x 1000 mm)に臨む。