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 枕元で、ー まだ起きないよ。いいよ。いいよ。寝かせておいてやろう。ー と聴こえたが、瞼を開けることも身体を動かすこともできない。声が遠くへ離れながら、ーこんな時間だよ。ーと辿ってから、眠ってしまえと思った。という夢から醒めると夕方で、西日が真横から差し込んでいる。身体の節々に痛みがあり、風呂の捲り辿りも、冬の没頭を背負ったままの、なにか緊迫した読みになっていたかもしれない。片付けやら掃除やら洗濯やらを待つ状態をみやってから車を走らせた。

 手を伸ばせば触れることができそうな微細な山肌や樹々の立体的な奥行きの大気を巡らせる空間の圧倒が日々あり、生成される環境音響や光の明滅も複雑で簡単に捉えられるものではない。想像の領域に関して、こうした環境をトータルに受容するという基本があり、其処では演繹的な観念で捏造をイメージするなど勝負にならないから、委ねてはじめるということがある。つまり早い話、ユニーク(固有)は、いずれにしろ何処に足をつけているかが前提となるわけだ。木の芽時の危うい妄想は、生きている場所を喪失すれば加速する。