DP2Q 030315

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 風に乗っているというのでもなかった。はじめは交叉点の上をいっきに飛び抜けるいきおいを持っていた。交叉点では南の風が周囲のビルに乱され、瞬間毎に方向を変えていた。直進の信号が赤に変る直前の外側の車線に移り、西へ向う車の間にまぎれこんだ。ここからはしばらくその姿が見えない。強い排気に煽られたかどうかして、突然高度を取り戻した。デパートの配送のパネルトラックのスチールの角に触れそうになり(実際接触したのかも知れない)急旋回して離脱する体勢をとったが、たちまち箱型車体の渦に巻込まれてしまった。タイヤの高さをなんとか維持してそれでも七、八台をやり過ごしたあと、アスファルトの路面に降りた。白い翅をたてている。そして、助からない。グレイのトヨタが前輪で轢いていった。翅は破れもせず、たたまれて横倒しになっている。それからあとは、通過する車が乱す大気によって翅は立たされ倒され、叩きつけられ、ふわっと一回転だけ空中に舞い上らされるようなこととなった。

「モンチロチョウ夏型」伊藤聚 (1935~1999)

 江代充で吸い込むものが変ったようだった。岡田隆彦、建畠晢と辿ってから、伊藤聚で眠らないと駄目だと、弁えが自然に降りた。

併置コンデション(超具体) >>

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