足音呼気
倫理とコンセンサスを巡る思考を辿った朝に、何も思わずに丸い葉を探して手にいれたばかりの小さな葉だけの草木鉢に水をやり、その姿勢のままの時間で行うことが、つまり生存の条件として、生半であったものが少々腑に融ける位になったか。
道具ノ姿勢
雪の融けた庭の、この冬の圧雪で折れてしまった八重桜の幼木を、根はしっかり張ったようだったから諦めきれず、傷口をバンドエイドで治療するように、添え木に麻ひもをきつく縛りつけてから焚火をした翌日の朝、霜が降り溜息をつく。
夢後雪戻
寒いなあと明けてきた外をみると雪が降っている。昨日の夢を割と克明にスケッチなどして、ディティールをあれこれ転がしていたので気がつかなかった。午前中に工事の方が来るので慌ててストーブをつけ、タイヤを履き替えた場合はチェーンでくるのかしらと他人事を案じる。
木芽時
枕元で、ー まだ起きないよ。いいよ。いいよ。寝かせておいてやろう。ー と聴こえたが、瞼を開けることも身体を動かすこともできない。声が遠くへ離れながら、ーこんな時間だよ。ーと辿ってから、眠ってしまえと思った。
春魂振域
制作の空間と併置の空間の差異を思い知るように設置を実に静かに淡々と行う。併置空間へ作品を持ち込んだ当初の俯瞰の眼でさてどうしようと途方に暮れたけれども、ひとつひとつの作品の成立の力(過ごした時間)に近づくことしか出来ぬから、それをするしかなかったが、それでよかったようだ。搬入と設置時に作品がふたつ壊れたので修復すると新しく気づくことがある。制作の実感、醍醐味、何を考えて作業しているのかを比較する […]