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 雪の融けた庭の、この冬の圧雪で折れてしまった八重桜の幼木を、根はしっかり張ったようだったから諦めきれず、傷口をバンドエイドで治療するように、添え木に麻ひもをきつく縛りつけてから焚火をした翌日の朝、霜が降り溜息をつく。

 倉庫ギャラリーの脇に仕舞ってあった残りの枝を、これが昨年の暮れの最後の採集ものだから丁寧に剪定をする。修理調整したレンズ解放を試しながら行った撮影のカメラと違って、剪定鋏が促す手元と姿勢というものがあり、考えるより先に、かたちは鋏によって(ぽつんと)もたらされた。指に握る木炭も粉炭を溶かして含んだ筆もそうだが、使う道具によって知触の働きは異なるから、道具に依拠し徹底してこれに付き合うしかない。

 時節柄もあるだろう最近酷く寂しがっている実家の母親のこしらえたふきのとうの天婦羅を頂いてから山に戻り、すっかり日の暮れた庭で斧を幾つか握り、剪定鋏と異なった右脳の動きを確かめ、新しい手斧を探す。

041115