光ノ思想
以前レンズは人間が考案したのだから人間的になるだろう。否なるだろうかといらぬ考えを迷わせたことが幾度かある。レンズは反人間的に光を屈折させて像を結ぶから、その結果は外世界の有り様に含まれるものにすぎないからだ。スピノザがレンズを研いた時彼も同じようなことを考えたにちがいない。人間の視覚や記憶がレンズ的であると考えたのは、残像を得た結果であって、それまで人間的な視覚と記憶はレンズに縛られたものでは […]
湿時乾考置
贈り物を頂くことに慣れるというのはないだろうし個人的には奇妙な感触があるが、とにかくあまり頻繁に身に訪れる出来事ではないので、その唐突に躊躇と歓びが混ざったまま放心に結ばれるような状態が据え置きになる。 土産というものは勿論有り難い。けれどもまっすぐに自分に向かったベクトルで胸の前に差し出されると、言葉を失う。 ほんとうにありがとう。としか云えない。
水指行方
昨年修復したテラスは一冬の圧雪を乗り越えたが板が二枚反り返っているのがみえる。樹々の枝の先端に生命の力が色彩で示され、それに促されるようにこちらのカラダの軸から胎動するなにものかがある。みえることみることがこうした季節の移り変わりの時節に翻るような効果を齎し外の世界を眺めているその実感をともなって自己に率直に向くことを悦ばしく感じながら、せいぜいこの「率直」だけが頼りの足取りを誇ろうかなと。