ファインダーと網膜
速読の癒しを緊迫し凝り固まった観念に与えるために、予感があって持参していたタルタロスの審問官 / フランク・ティリエ(1973~)(七匹の蛾が鳴く)の古くさい翻訳にいささか辟易しつつ、読み終えて死者の部屋を注文。若手の作家だけあって複雑なプロットをダイナミックに牽引展開する力はあるが、主犯の人格設定に説明の足りなさがある。コミセールの一人称で語られる文体にいささか勇足もあったが、これは作家の若さ故 […]
ロケハン
高速を軽井沢で降り、旧軽井沢の別荘地を静かに迷走移動しながら、「続明暗」 / 水村美苗を憶いだしていた。中軽井沢のセゾン美術館で、コレクションを観てランチをとり、手入れされた庭を歩きながら、コレクションの殆どが馴染みのある過去と真っすぐ繋がっているので、引き寄せられる過去の断片に若干羞恥を覚えた。 国道で小諸まで戻り、懐古園脇に小さく残されてた小諸義塾記念館に立寄り、資料年譜を見ると、指導教員の名 […]
街を見上げて
歩く時、空間のパーシュペクティブがゆっくり動き、光の反射の角度がモノの表面の質感を変え、あらゆる対象が微妙な位相の間を変異して、安定を揺さぶり、移動することに活性を与える効果がある。なるほどこの作品は、そうした移動する視線を促す構造となっている。空間の中央を占める構造体は、都市のスケールモデルに似ているが、近寄ると細部が、映像やタブロー、キャスティングオブジェなどのミクストメディアであるが、総体的 […]