ディスクトップの森林の瑞々しい色彩から、ふと思いだして胃が重たくなった。見捨てられて末期的な色彩の外堀の水は、つまり石原都知事の美意識の反映と考えていいか。まあ、イコールこの国の美意識だろう。夏に醗酵して、いっそ夜な夜な魑魅魍魎がぎゃあぎゃあ生まれ出る淵になってしまえば、それはそれでむしろすっきりする。
仕事の合間に、やはりミュンヘンをちらちらと眺め、カメラや色彩の繊細な気配りに、ある意味安心していた。透き通るような幼子の白い肌の色と、透明な陽射し、グレーがかった茶系の時代を、現代において構想するというなんとも羨ましい構築を支えるのはつまり大陸の光なんだと、高湿で水中に漂うような都市の底で浅ましく想いを募らせる。
朝青龍明徳が発作的に祖国に戻り、大気に触れたくなる気持ちもわかる。この夏は、帰省等できそうにないと、諦めた途端に、空間の悪しき抑圧を普段より余計に抱え込むようだ。
それぞれそれなりに多忙な娘達がオフィスにノートPCを持参して、日々のスケジュールで横に置いた「夏休みの宿題」を悲鳴を上げつつ、時に居眠りをしつつ、ボヤキながらやるのを眺める。次女は来週の吹奏楽のコンクールにトロンボーンのメンバーとして選出されたので、休みなどない練習の日々、宿題が手つかずのようであるので、コンクールが終わったら、戸隠のエル二世に会いに一人で帰省させてもいい。長女はそろそろ受験モードに突入し、「自己」をまとめあげるのに苦労している。独り自身をみつめる時は、日々何を吸収し、誰と会い、何を話しているのか、何を誰から聴いているのかが率直に顕われる。モノの考え方がまだ浅薄で、雛形を使いがちなので、この辺りの修正がむつかしい。
長女はステーキ、次女はラザーニャを平らげて、こちらは仕事がたんまりあるので、勝鬨駅にて見送る。
どうして、皆、こうも忙しいのかと首を捻りつつオフィスまで歩く。3ヶ月間、言葉を忘れ社会復帰不能なほど、無人島で過ごしたいわ。