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新緑の森は海の中のようで

小雨の中、車を走らせて山に入ると、突き刺すような新緑のグリーンが溢れ、標高によってはその勢いに差異があるものの、車を降りると怖くなるほどだった。 平日の雨上がりは、色彩が膨張して、大気が染まり、こちらの肉体の隙間から入り込むので、緑色の脳みそを浮かべた。 あちこちを巡ってこの日はロケハンのみで終え、晴れた休日には早朝からと考えていたが寝坊して、昼過ぎに目星をつけた場所を巡り直して撮影。このままこの […]

竹の林(バスでのメモ)

朽ちた屍体は、兎のようでもあり鼬のようでもあった。 (深夜車で轢いた小さな小動物を拾い上げた同乗者は、死んでいますねと首の垂れた小さな身体を片手で持ち上げた。) 森から下りて竹の林に入ると、足元の白い体毛のなかに小さなキノコを群生させ、骨の一部は洗われて、季節をひとつ前に戻した雪の中で息が絶えたと思わせた。 林の上空は風が吹き渡り見上げる枝はあらぶっていたが、 林の底は、この小さな骸のさらなる腐敗 […]

石の上(地下鉄でのメモ)

君は石の上に立っている。 やや左足に身体を任せているのは、利き足が右だからだ。 踵に力が澄みきって、姿勢の躊躇いもなければ狼狽えもない。君はまだ弱く若い。 濡れた石の上に長い間立ち、足跡はうっすら凹んでいるから、 君がそこに存在したことの証となって、その窪みにこうして雨の後、水滴を集め、 垂直に上昇する身体を持った。 新緑の色彩の気配は背後にある。 いつになく広々とした空間が、君の足元から向こうへ […]

特殊と固有なる表象の重さの違い

生まれたばかりの赤ん坊を見て、そのあまりに特殊な存在に堪えきれなく人が少なくない。未知の惑星に降り立った足下にある、何かわけのわからないモノを前にして立ち尽くすような感覚と似て、こちらの固有性を経験のテンプレートからそのコト自体へ注ぐことは不可能に思え呆然とし、時には気が振れることもあるという話にも頷くことはできる。少子化が当たり前となりつつある昨今、子供に馴染みの無い大人が増え、そういった感覚を […]

表層のその深さ

宵の口まで素材状態のあまりよろしくない動画編集に翻弄されつつ飯も喰わずに数時間行っていて、幾度かの電話に継続を中断されたが放り出す切っ掛けにはならなかった。数日前に切れたディスクライトのクリプトン電球が宅配で届き、手元が明るくなってようやく仕事を仕舞う気分になる。昨夜呑み残したワインとバケットを腹にいれながらノスタルジアの場面を憶いだし、ワインで広がった胃にバジルのパスタを満たして、DEILS D […]

朝まで映像編集を行い、6時にはベッドに潜り込んで眠ったが8時には起こされ、9時前には玄関を出た。 ディラッドスクリーン仕様のガラス板と、特注した支える机フレームなどをミュージアムに残したままであったので、翌日の完全撤去の前に片付けるべきと、戸隠の叔父から借りた軽トラで小布施に向かう。 今回は雑用の他に編集や持ち込み業務もあり、撮影などしている時間はないだろうからノートPCとG9のみの簡単な手荷物で […]

季節

Apple Storeより電話があり、MacBook Proをフルスペックカスタマイズ注文し、キーボードをUSタイプにしたのせいもあるのか知らないが、アメリカ本国でカスタイマイズ組み込みを行ってから搬送納品となるので、暫く時間がかかるとのこと。これに関してあれこれぼやき(2週間かかったとの書き込みもあった)もみられるが仕方なし。 ゴムまりが弾むような瑞々しい存在感を薄着になった道行く女性達にくらく […]

嗚呼

新幹線の座席でパトリシア・コーンウェルを捲り始め、(新幹線には確かにあたふたと飛び乗っていた)、軽井沢の浅間山を眺めようと窓に顎を上げた途端、オフィスの鍵はどうした?懐のポケット、キャリングバッグを調べるがどこにもない。ぼうっとして、鍵を入れておいた小さなポシェットを別搬送の荷(宅急便)の中に入れた手元が浮かび、途方に暮れた。 朝からミュージアムの残りの仕事(撮影の残りとシステム調整)に出かけ、急 […]

息災

数日前から家族に対しては造影剤投与や血液検査を臆面も無く怖がり、食事も制限し、当日の朝は早くから殊更繊細に準備に追われる風だったが、本人は検査の肉体的な不安よりも再発を勿論誰よりも怖れていただろう母親の癌細胞の転移を調べるCT定期検査が、午前中をかけて行われ、付き添って映像を視認した父親が「きれいだったよ」と説明する横で、嬉しそうにほっとしている表情に、こちらもやや緊張気味だった胸を撫で下ろした。 […]

みちのく秋田の味

ー冬を告げる雷が鳴る頃、産卵に寄ってくることから「鱩(ハタハタ)」と書かれるようになったとも言われる・・・・。ー 稲妻が切り裂く由利海岸の空を見上げて漁に出向く男たちを想起させる言葉が、丸い器の折り込みに書かれてあった、二段に詰められた秋田にかほ市永田屋のハタハタすしを、頂き物のお裾分よと昼前に妹が持って来てくれたので口にする。濃厚な甘みが寝ぼけて乾いた口に広がり暫し放心する。 正月料理は飽きたの […]

寒い

午前4時に脳天があまりに冷え込むので目覚めた。 丁寧な記述をするなあと、Babel ( HDD-DVD正解:respect)から辿った聾者亀井伸孝氏のサイトを読む。 湯槽とトイレでの読書 ディアローグ/平野啓一郎 モノローグ/平野啓一郎 「世界の終わり」を超えて/浅田彰 平安堂からDVDレンタルしようと立ち寄るが、観たいものがあまりない。 transformers : お子様仕様。 Apocaly […]

個人の限界

ひどい頭痛と鼻水を垂らして、火星移住が現代的な人間の生業の延長で組み立てられるKim Stanley Robinsonの構想を辿りつつ、結局人間の業へ転化せざるを得ないのは、せいぜい個人の紡ぐ物語であるからだと大袈裟な期待を諦めた。こうした想定を今でいうならば、例えば優秀な差異に満ちた頭脳ユニットの研鑽によって可能性の展開を連想し、実現に限りなく近寄せる新しい物語の試みとして商品化させ、我々はさら […]