小雨の中、車を走らせて山に入ると、突き刺すような新緑のグリーンが溢れ、標高によってはその勢いに差異があるものの、車を降りると怖くなるほどだった。
平日の雨上がりは、色彩が膨張して、大気が染まり、こちらの肉体の隙間から入り込むので、緑色の脳みそを浮かべた。
あちこちを巡ってこの日はロケハンのみで終え、晴れた休日には早朝からと考えていたが寝坊して、昼過ぎに目星をつけた場所を巡り直して撮影。このままこの季節をさらっと通り過ぎるのはあまりに勿体ないので、一度東京に戻り、DVカムを持って再度撮影する事に決める。
帰り道、霊園に寄り、枯れた花を取り去って、脇に咲くマーガレットを活ける。夕方から撮影データの整理と、学校の授業準備。夕食は両親にあんかけ揚げ焼きそばを作り、自分はペンネにトマトソースと、アボガド。機材は置いたまま朝一番の新幹線に乗ることに決めた。
6時長野発の新幹線は7時40分に東京に到着し、一度オフィスに戻り、何度か捲り終えていたが、「言葉の始まり」と「白暗淵」/古井由吉を肩掛けに放り込んで、地下鉄に乗る。
夕方ユーボートへ寄り、一戸建ての物件を眺めつつ歩いてオフィスに戻り、DVカムの準備をしながら、「ヴァンダの部屋」/ Pedro Costa(1959~)を観る。3時間弱の長編。固定カメラのみの編集が凄まじい。
中華「安」で、野菜炒めと紹興酒を頼み、戻ってウヰスキーを呑み、気づくとソファでそのまま寝込んでおり、朝の4時前だった。天気予報では雨。台風の影響らしい。
あれこれ雑用を片付けてから、雨の中DVカムと三脚を担いでバスに乗り、昼過ぎの新幹線に乗車。車内では「白暗淵」を辿る。軽井沢から雨は上がっている。上田の町並みに、こんもりとした緑が散在しており、落差のある土地だが環境は長野より良いのだなと眺める。