ー冬を告げる雷が鳴る頃、産卵に寄ってくることから「鱩(ハタハタ)」と書かれるようになったとも言われる・・・・。ー
稲妻が切り裂く由利海岸の空を見上げて漁に出向く男たちを想起させる言葉が、丸い器の折り込みに書かれてあった、二段に詰められた秋田にかほ市永田屋のハタハタすしを、頂き物のお裾分よと昼前に妹が持って来てくれたので口にする。濃厚な甘みが寝ぼけて乾いた口に広がり暫し放心する。
正月料理は飽きたので、外で好きなものを食べようと昨夜は両親と連れ立って車で出かけ、母親は海鮮せいろ、父親はヒレカツ、私は海鮮チゲ鍋にうどんを入れて平らげていた。なるほど似たような家族で混み合っていた。同じ献立を食すのは家族の宿命だが、流石にそればかりでは硬直する。
正月気分はとうに消え、一昨日から早朝迄椅子に座り続ける仕事を始めて、スケジュールなどの調整も行いながら、何度繰り返したか忘れた荷造りにも手を出したが、どうしても撮影の日を挟もうと欲を出す。
先の見えない空漠が荒涼としていても、そこへの一歩に惹かれる性であり、月日と共に分かることの得心を棄てて、体感に近い捉えを祈るように噛み締める無防備を、これまた良しとするのは、系譜のどこで紛れた遺伝子のなせる技なのだろう。
新しい年になって一週間を過ごしたが夢の記憶が無い。初夢などどうでもいいが、自身の睡眠は一体どうなっていると訝しく日々の不規則を省みた朝方に浅く寝入ると、睨みつける少女の顔が浮かんだ。どうやらこちらは撮影をしていたようで、それでいいと頷いて、あっさり元の顔に戻った子どもを帰してから、横顔は祈りの対象には力不足かなどと呟いた口の形を残こしたまま目覚めていた。
10TH & WOLF(2006) / Robert Moresco
:Giovanni Ribisi(1974~)が秀逸。デニーロを超える。脚本には頷けない。殺戮の描写はリアルだが、動機や衝動が不自然。
Paprika(2006) / 今敏(1963~) : 脚本が浅い。こうしたジャパンアニメは大人の仕事と受け取れない。二度観たいとは思わない。
Woundings(1998) / Roberta Hanley
夕方からこの街の唯一の財産といっていいアクアウイングへ行く。50mプールの2レーンを使って、高校の水泳部が特訓を行っている。コーチの説明に答える子どもたちの声がくっきり響き渡り心地よい。
水の中では何も考えないように浮かんで進む。身も心も洗われる。
帰り道書店に寄り、元旦に発行された、トゥルー・ストーリーズ / ポール・オースターの新潮文庫を購入。
H(2002) / I Jong-Hyeokが廉価版で販売されていたので購入。
ラストシーンは、含みがあり良いが、物語の主軸となる鍵がなんとも卑怯な手法に思える。ギミックは凡庸な出来事の中に仕組まなければ、手の届かない機能不全の神話になってしまう。主演のJi Jin-Heui(1974~)の好演で辛うじて映画が成立している。