撮影の後で大正年まれの壮健な画家である田中先生に夕食を一緒にいかがですかと丁寧に誘われたが、行った事もないボリビアの山岳のような眺めの作業がオフィスに残っている。有り難いけれどもと連れの生方、加覧両先生方にもすみませんお先に失礼させていただきます。頭を下げた。土産まで頂いた上りの常磐線で、下り時には眠気が差して瞼を閉じていた車窓の景色を、夕刻の時刻の日差しとこの季節の萌え色と、乳母車の父親似だろうか小さいが表情のはっきりしはじめた男の子に水をあげている若い母親の指先がそこに重なるようになって、そのいずれでもない眺めにみとれるように、人の乗り降りの隙間の窓の外、スカイツリーが見えてくるまで、ぼうっとiPodのSadeばかり繰り返して瞼を広げたままいた。
 利根川の叢の中でスケッチする歓びを語る画家の気持ちが、ほぼこちらの歩行のそれとこれも重なり、窓の向こうに広々と流れる幾つかの川を超えて行く列車の速度が、一期一会の惜しいような味わいとなって感じて流れた。
 奥様が彫刻家でいらっしゃる画家の松田先生のアトリエに最初にお邪魔して、震災の時の話等を聞き、冷蔵庫に貼られたまだ小さいお孫さんの可愛らしい写真をみて話の筋を裏返すように微笑んでしまい、失礼だったなと振り返った。

 考えてみれば芸大が移転した取手は、教え子が行ったから程度の知識だけで、土浦、桃浦は足を運んだ淡い記憶があるが、初めてだった。松田先生の奥様の話では、この取手あたりも液状化が起ったらしい。国道6号線から入った競輪場とキャノン工場の間に位置するお宅の横では、工事がさかんに行われており、これも災害のせいかもしれないと思った。

 常磐線と大宮あたりは似ているか。車窓で比較していたが、いずれ時間のある時にぶらりと、利根川河川敷などひとり気侭に訪れてみたい。

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