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 過程そのものに磁性と魅力があり、その経緯自体に充実するということは、人として生として幸せだが、ルーチンの縛りともなり得る。

 このところ鉋をかけ、鑢で磨き、電動サンダーを使う、懐かしい制作過程の時を得ながら、そういえば学生の頃、彫刻家の友人が気の遠くなるように堅牢な黒御影石をひねもす手で磨いていた姿を眺めながら、こちらはあれは出来ぬと溜息をついていたことを憶いだした。
 鉋を只管に木にあてる必要はなかったし、石のような堅牢なものを、ましてや世代に渡って磨き続けるような無謀を試みるつもりなど毛頭なかったので、かたちの辻褄の為の行為の過程だったが、なるほど磨く事は体感的にかなりの充足を与えてくれる。

 絵描きが筆と絵の具に塗れ、彫刻家が鑿と磨きに軀を時間に投入する、つまり制作過程は、出来上がる作品の実現の結果よりも人間を虜にするというわけだ。だが芸術は面白い事に、そうした人間的過程とはかけ離れた唐突さで、作品に宿る。故に作り手の過程など、いっそ表象されないほうがよいともいえる。