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 家に戻りギャラリーでのスナップ撮影を辿るとこんなところに海がみえる。勘違いを膨らませるに任せた。(画像:鬱間主観ギャラリー花蔵ごとうなみ作品部分)

 面妖な睦事からはじまる「蜩の声」を、蔵の中のランプの形をした古く赤い灯りの朧な光量で場所相応だが目には足りないスタンドの光の真下に置いて、気怠い気象に気持ちをすっかり預けて辿っていたせいか、夕方には目が弱くなった。実家を回り母親の大腸検査の結果を聞き3ミリから6ミリに成長していたポリープを来年にはとりましょうと医者に言われたと今は保証されているような口調にとりあえず安心し、車のディーラーへ回って山に戻る。眠りつく事ができず一度ならず二度ベッドから起き上がり風呂を温め、とうとう外は明るい朝となって、先程屋根を弱く一斉に叩いた雨も今は止んだようだ。縁がなければ只管な反復の境地を死人のような静かさで生きているのだろうかと、辿りの中途の湯槽の中、書物の言葉を憶いだして淡い馴染みのある孤立へ際立つ夜だったかなどと振り返るでもなく顔を洗う。近づいた事ごとがさっと遠ざかるような季節でもあるから、あれこれ戒めることは必要かもしれない。