走りのコースを拡張しようとバイクでこの別荘地のすべての路を走ると開発からの積年のカタチが未だ知らなかった起伏の奥に様々に現れ、川上という地名の北側は高坂という地名となって路地の名称も異なった広がりがある。この開発地全体の外縁を周回する路が折れ曲がり複雑であったが繋がっており、枯れ落ちた透き通った風な林というより森の様々な位置感に古いのか新しいのかタイムスリップしたような瀟洒な家々が在り、これが宅地とは一風変わった別荘地ならではの特異な意匠が込められた家々で、中には数年訪れていないような手放しが伺えるものもあり、また定住の煙突の煙も、思いがけない森の奥から垂直に青く立ち上がっている。広大な庭にぽつんと座り込んで木々ひとつひとつを丁寧に支えてまとめ藁を敷き冬支度をしている背中もあり、ダウンを着て犬を連れた散歩の人もいる。丁度最近、この界隈の道沿いに積雪で見失うのだろうその輪郭へ赤白の竹棒を立てる作業が自治体で行われていて、轍の消えかかる使われない家もない行き止まりの路地までへ丁寧に並んでおり、移り住んで走りはじめたとはいえ環境のごく一部しか把握していなかったと頭を掻いた。この季節のどこか透明感に溢れる別荘地はまるで遺跡のような趣があり、早朝には撮影をはじめるかと大いにそそられる。

金曜日の朝にはブラッド・メリディアンを読み終え、名残惜しい気持を抱えながらずるずるとゆっくり辿っていたけれども、本を閉じてまた一層、凶暴で清潔な空間に寄り添えなくなる淋しさが溢れた。「平原の町」を捲り始める。ゲンタより「すべての美しい馬」を読み始めたとメールにあった。湯槽では構造的なものを捲り、業務の間で幾つかのシネマを投影し、週末には三週間ぶりに注文した Bitter / Meshell Ndegeocello / CD が届いたので、実家の家事の手伝いから戻った休日の午後は、夜半まで聴く。

例年よりも5日早い初雪だったこともあり、その後朝には窓の外が白くなる日も幾たびかあって、路面も凍り付く低温の時に備えて、少々早いかなとは思ったが土曜日には叔父の家で油圧ジャッキを貸してもらってスタッドレスに交換し、夕食をごちそうになる。酒を呑むから近所のオサメを誘ってドライバーを頼み、叔母の美味しい料理を堪能する。引っ越し祝いまでいただき恐縮する。ディーラーに寄ってオプションパーツなどを注文すると、交換したスタッドレスのタイヤの位置が違うと指摘され、昨今ローテーション用にタイヤ毎に履く場所が指定されるマーキングがあると知る。アルミホイールキャップもパンとはたいて取り外し、スタッドレスに付けるには一度取り外さないと駄目と加えて指摘されたので、火曜日の父親の検査の後にディーラーにて一ヶ月点検と一緒にやっていただくことにした。午前に混み合ったオートバックスで父親の車もスタッドレスに履き替え、ナビのサイドブレーキモニター解除は頼めないかと尋ねると無理だと断られる。ランチに誘い出した両親と共に帰り道園芸店に寄って庭に植えたいと考えたケヤキの幼木を探すがないといわれる。食事の帰り道、父親のドライブリハビリを行うが、四ヶ月ぶりの運転は身体が覚えているとはいえ心もとない。母親は怯えた。隣に付き添ってこれも継続する必要がある。車を購入したディーラーから軽井沢倶楽部ホテル軽井沢1130の宿泊招待をプレゼントされたので、これもリハビリになればよいと両親を連れて行く予約をする。ディーラーでも運転中にナビモニター再生カスタマイズはできないと言われ、自分でやるしかないと諦めるが、よく考えてみれば必要もないが、助手席に座る人は喜ぶ。事故は起こしたくないけれども。

灯油タンクの補充を業者に頼んだ翌日に、バーナーがエラー表示を示し、マニュアルをひっぱりだすとシーズン毎に定期点検をすべしと記されており、師走の慌ただしさの前に至急依頼することにする。
エントランスの駐車スペースを掃き、スコップやら鉈やら道具を整理して、一本の棒を手にして振るとブンと音がするので、獣と戦うのはこれにしようとしばらく振り回す練習をして玄関にたてかけてから、腕が痛くなったので笑う。