携わっている倉庫ギャラリーの新しい取り組みである*「Button Badges Artists Works」の展開を自らどのような具体性があるのか検証していくと、なるほどカンバッジという安価で拙いフォーマット(大きさ・体裁)に、記号的且つ画一的に現れるわけではないことに気づく。
 匿名的責任所在不明の同形量産のそれではなく、一点限定の「オリジナル作品」として、作家名を帯びたオブジェクトとしてその対価を設定して制作にのぞむ時、おそらくコピー可能な印刷原型(単なる印刷物実装)では、その意味をなさない。
 手描き原画を封じればよいという差別的な諦観手法がまず実践されるだろうが、制作者自らの作家性(コンテクスト)と、作品それ自体の強度が、併置相対(ショップで累々と並列販売される)において、事前的に再考再制作が促される種類のフォーマットであると思われる。工芸的集中をその小さな面積に与える、作業の累積を傲慢に示しのこす手法の他に、フォーマットへの関与自体を観念的に組み替える手法もある。だがまあいずれにしろ、現れる様々を待ちながら、作品の強度の差異というものを確認しつつ、掌に乗る結晶のようなものが顕われ続け、この点のような打ち込みによって大きく変革される悉(ことごと)に期待しよう。

*このBBAWというプロジェクトは、作り手と受け手、夫々に対して、FFS倉庫ギャラリーという「寛いで交感する場所」の環境構築のサポートを互恵的に願うものであり、こうした仕組み自体が、視覚藝術の構造を成立させる骨組みになるだろう予測に基づき発想された。進捗をみて、作家に依頼する形態と、ワークショップにより、初心者の制作展開が加えられていく可能性もある。展けとして、この単純で小さなフォーマットで限定個数の制限を設けたオリジナル画像印刷に特化したシリーズ(平面圧縮に馴染まない表象群に対しての配慮として)、あるいは全く別のフォーマットに変位する可能性もある。