dscf1512 十八ヶ月前に神楽を浮かべて下書きをしていた「天狗の宇宙旅行」というイメージは、季節が移り変わる度に池の底から浮かんでくる泡ぶくのように繰り返されていた。丸谷才一と山崎正和の「日本史を読む」という対談冒頭で語られる、斎藤茂吉の万葉集解釈と大岡信の解釈の違いの指摘、丸谷自身が首を傾げた記憶から紐解く万葉恋歌の実際の環境構造への眼差しに大きく得心するものがあり、今回準備制作しているいわば「反矩形」のアンチとは、つまり対象に対する唯物的な関心(批評)である「ヒューモア」的構築なのだから、「天狗〜」をイメージのまま浮かばせたり沈めたりするより、いっそ手元に照らしてみようと、できることをはじめた。
 リアリズムは求められていなかった古代幾多の状況を巡らせることを重ね、現代のVRという倒錯的妄想の環境へ、超現実(リアリズム)をアナログにて展開する場合、成程、「らしさ」へと経巡る紆余が、おおらかな環境を支えることもあるだろう。
 天狗は飯綱山三郎天狗から想起しており、空海の密教輸入から人民の生活を安定させる土木工事を含む観念的な「社会構築」の理念の軸と成った修験者(天狗)の気概は、宇宙を旅する未来へまっすぐに結ばれているという、妄想の航路図を、インスタレーションで表出してみようというわけだ。