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 作業が直情的になっていると抑制の距離をもって離れ、刃を外して鉋を調整し、そのままの心地で組み立てて樹皮を削ると、雁皮を使えば良いとふいに理解が降りた。まだ瑞々しさのある湿った樹木の肌合いのようなものがこちらに浸透し促したようだ。繊細な紙質である雁皮紙は銅版画の描写の幅を広げる効果があるので同時擦り込みで使ったことがあるが、おそらく木肌自体へもその繊細が元に戻る傾向をしてよろしい効果が期待できる。転写の際の圧が気にはなる。

 炭素鋼はいずれ錆びるのでステンレス鋼の鋏が良いのか悩んだが、炭素鋼のほうが研いで刃が立ち易い上矢張り安価。

 構成を複雑にするつもりはないけれども、ささやかな工夫は想像力のゴリ押しを押し戻して堅牢にするので、跳躍の形を検証する働きがある。

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