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石鹸(桐原由江制作)の為の枝切置
 桐原由江の、グレーテルが森で籠に拾い集めたものをヘンゼルがそれは喰えないよと窘めるかの、ハンドメイドソープを使わせていただき、目から鱗を落とした。5千年前シュメールのソープの丘で羊の脂が灰に落ちた偶然から生まれた石鹸は、現在では日常的なツールであるにも関わらず、香るだけの悪しき生産物が主流となっている。
 身の汚れを落とすという仕草を手に入れた時、人は明日を生きる内省を健やかにして快適な社会を生きる気概に充ちたに違いない。
 私は日々の散策と採集から存在の楔をいかように表出させるかを伺いつつ、時に自己展開を離脱して、こうしたささやかだが実直で美しい手作りという小さな思想の為にだけ成立する併置というものを考えるのは、どこにも不都合がないと思われた。