実現に対して凡そ三割の導入材料を目の前に広げ制作投入をはじめる。
指を鳴らすと膨張が減速するはずだった宇宙が縮小を始め全てがリバースしビッグバンの一点に収斂し消滅する夢想を描いたこともあったが、どうやら散乱へ拡散へ加速しているようで、いずれ多元宇宙との接触の痕跡(さざ波)が膨張外縁にみつかるかもしれない。となりの別玉へ乗り移らないかぎり孤立し雲散霧消というわけだ。アインシュタインの過去と未来と現在の時空切断面を眺めの地平と首を傾げて目の前に投影するような錯覚を弄び、確かに過去の仕草の反復が宿り、あるいはまた少し先の溜息が現在にもれそうになる。
数日前にボリビアのティワナク、プマ・プンクを十数年前のルクソールへの目付きと同じ憑依の姿勢で調べつつ眺め、翌日に成り行きで辿った川端雪国の非情の恣意に辟易して湯槽蓋の上の小島信夫に戻り、窓の外の霧の中の直線を思っていた。プレ・インカには鉄がなかった。
厚さ2cmの鉄鋼は予想した以上にずっしりと重くそれがこちらにとってはどこか嬉しい。