このあたりから黒姫にかけてリモナイトの鉱床が結構広がり現在も鉱山操業中と知る。
褐鉄鉱床ゆえの浄化と黄土色が黒土を分ける流れの幾つかは確かに色づいている。この地勢原理に則るというより受け止める広がりには記憶を叩く物も転がりはじめた。
人様の運転の後ろで考えを転がす移動は時に饒舌となり時に寡黙となり手前勝手な散漫な徒然を人に放るのを許していただいた夕方、流石に睡眠の不足が祟った。
作法が目的となると傲慢なエゴが顔を出し下手をすると内にも外にも悪意を促す温床となる。仕組みは大抵作法へ進むものだから気づかずに思ってもいなかった立居に驚き贖罪だけが負債となる。
つまり、フォーカスを外し、見えない水平線の彼方へ眺めを放って、時には地上の生きとし生けるものへ注ぐ光と化けるささやかな道化も必要ということだ。
脱衣場の窓の下に数冊開いたまま俯せた水を含んで膨れた中の小島信夫を手に取って、最近の二ヶ月ほどの錯綜がやや解かれたこともあり、風呂に浸かり、知らぬうちに42度ほどの湯に逆上せることもなく、湯の中の中心にいくほど氷のように冷え込む覚醒を伴って、二度三度湯のあたためボタンも押したかもしれない時間を忘れるほど残光を捲り辿っていた。
