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深夜ダイニングテーブルで仕事の合間に旭川から届いた「現代文學体系6 北村透谷 山路愛山 集」を捲る。

1967年初版のもので程度は良い。新聞の中綴じ広告に丁寧に包まれて送られてきた。1893年(明治26年)10月の透谷 (1868~1894) の「万物の声と詩人」の縦書き(横書き)を辿る。明治の年譜を開くと書かれた年の1月に日比谷公園ができ2月に長野ー直江津間の鉄道が開通3月に大阪ー神戸間の電話開通11月にノーベル賞制定発表などがある。


詩人は己の為に生くるにあらず、己が囲まれるミステリーの為めに生まれたるなり、その声は己の声にあらず、己を囲める小天地の声なり、渠は誘惑にも人に先んじ、迷路にも人に後おくるゝなし、渠は無言にして常に語り、無為にして常に為せり、渠を囲める小天地は悲をも悦をも、彼を通じて発露せざることなし、渠は神聖なる蓄音器なり、万物自然の声、渠に蓄へられて、而して渠が為に世に啓示せらる。秋の虫はその悲を詩人に伝へ、空の鳥は其自由を詩人に告ぐ。牢獄も詩人は之を辞せず、碧空も詩人は之を遠しとせず、天地は一の美術なり、詩人なくんば誰れか能く斯の妙機を闡ひらきて、之を人間に語らんか。
ー 同文より抜粋