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点滴を押しながら立ち上がりあたたたと手術痕に痛みが走る叔父はしかし顔色も良く術後の食事についての栄養士の方の説明を一緒に聴きながらお酒は一ヶ月ほど待ってくださいという注意に残念そうに顔を緩ませウイスキーはいいでしょと冗談を添えた。

スケジュール通りに恢復すれば日曜日に退院となるがまだ重湯しか腹に入れていないのでどこか力が出てこない風な十一歳下の弟に対して経験者である母親があれこれ五月蠅く指示などして数日前には厳しく引き締まっていた近親者の表情に季節の訪れに似た安堵が広がった。四人の近親の男たち(父親、伯父一人、叔父二人)がここ数年で続けて倒れ、三人が亡くなったが妻たちは皆元気でなによりだがそれぞれが座して茶などを啜る場に同席すると連れ合いを亡くしたという意味での哀しい姦しさが生存の力のようなものに感じることが度々あり、こちらは男だから順序は違っても彼女たちよりも先に逝くような気がしてくる。

次女の受験も終わり結果を待つだけとなり途中経過も特待生合格するなど好成績でなかなか頑張ったようなのでこちらにも歓びが広がり、そうか横も下も女たちが犇めいていると、生命力に囲まれた枯れ枝のような気分をひとりで笑う。