血液検査で肝臓の値に異常がみられたので、長野中央病院で半日かけて精密検査をおこなった父親は、連休明けに検査入院することになった。
若い頃、腹を縦に一文字に切り開いた手術痕を誇らしげに晒す父親は、内蔵の部位の形態も異なっており、そのせいかわからないが、肝臓に繋がる胆管が詰まって膨れていることによって異常値が出たらしいが、その詰まっている付け根のあたりが、CTでは黒くみえるばかりなので、カメラを入れて詳細を検査しないことには、どうにもできないらしい。
最近3キロも4キロも痩せたと母親が嘆く理由がここにあったか。検査中にまだ戻らないかと心配顔で駆けつけた妹と、年齢的になにがあってもおかしくないからと、一度諦めてから立て直すような気持ちで、昼飯時に食欲が失せたままひそひそと話していた。
胆管の詰まりを放っておくと、黄疸、胆管炎の危険性があり、合併症として膵臓炎がひきおこされるらしい。内視鏡での検査、診断による治療という流れを示されたと、数日の入院を言い渡された父親の、お泊まり用具を買い出しに母親と出かけて、洗面用具やらパジャマやらを買い込む。
定期的な血液検査などしない昔なら、このままこじれてあの世さと、多少冗談も夕食の席ではこぼれた。数年前と立場の入れ替わった母親は、あれこれ世話を焼き、昨夜は早朝というより深夜の三時に起きだして、このまま入院するかもしれないからと、箪笥の引き出しを開けていた。
バイクであちこちへ走り回りつつ、せいぜい家族でこの夏は、飯綱の庭の草むしりくらいしようぜと、ヘルメットの中呟いた。