BSのBBCなど眺めてから朝方の湯槽に港千尋「明日、広場で」を持ち込み、なんだか懐かしい大陸の大気を湯気の中で遊ばせる。裏表紙の新刊の広告の列にフォトミュゼ/安井仲治をみつけて、禅を思わせる作品を浮かべ書棚にあったかなと首を捻る。数時間前、Gentaから、2年前に資生堂ギャラリーで開催されたSam Taylor-Woodの名を聴き、鮮明な文脈を想起させる作品を憶い出しこれも何かひどく懐かしかった。そのまま眠れずにまだ薄暗い書棚を探すのをやめて端末を辿ると、「生誕百年 安井仲治」が検索に引っ掛かり些か驚く。渋谷区立松濤美術館で、11月21日まで、開催されていることを知る。250点の展示とある。行かなくてどうする。というわけで、入館が4時30分までなので、また土曜日かな。月曜日休館とのこと。偶然の引き合わせというのはオソロシイけれども、彼方からの光に似た呼び声と捉えることにして、これに従うことにしよう。
Gentaに勧められた、L’HOMME DU TRAIN / 列車に乗った男を観る。ジョニー・アリディの瞳が青すぎる。テーマがくっきりとしているせいか、ディティールがすべて相対的な構図に収斂して、後半からラストにかけてくどい印象は否めない。物語である以上、映像が都度自立しなければ、映画としての力を失う。俳優の力に依存しすぎるとこうなる。21gramsは、正に魂の映画。時間軸を切り裂いた編集よりも、映画そのものを懐に見事に飲み込んだナオミ・ワッツの役者魂と彼女の本来持って生まれた人間的な美しさにガツンとやられる(リングの時はがっかりしたが)。派手さは無いが、こちらが待ちこがれたスタイルの作品と思えた。テーマ故の構造ではあるが、今後ミステリーやサスペンス、アドベンチャー、SFなども、こうした視点(考えるとひどく当たり前なのだが)で物語を構築することで、広がりが生まれるだろう。新しい倫理的な視座のひとつとして受け止めるべきよい例。脚本が素晴らしい。ショーン・ベンも、ミスティック・リバーより数段よい。アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(監督/製作/メキシコ)の才能も記憶しておく必要がある。Cave in は、コメント無し。次はAmores perros/2000/ Alejandro González Iñárrituと決めて、amazonを覗くと在庫切れ。観なきゃあいかんな。