次女の心臓から肝臓へ繋がる肥大静脈の詳細を確認観察する目的で血管に造影剤を投入したMRIの撮影を東京医科大学病院で行う。MRIはCTと違って被爆しない、磁石を使った探索であるのでその分不安はないが、造影剤というわけのわからない代物の副作用の不安が大きかった。あまり喜ばしいことではないが、診察慣れしている次女は、点滴に似た注射の痛みにも怖がることがない。何もなかったような表情で検査室から出てくる娘にあれこれ尋ねるほうが、不安を与えるような気がするのだった。つづけて、睡眠脳波測定、血液検査、尿検査など一日がかりとなったが、近くのレストランの食事が彼女にとっての今日の最大の目的らしいことが、こちらの不安を蹴散らしてくれた。検査間に時間ができたので、紀伊国屋まで長女に頼まれた問題集を購入するため歩くと、灼熱の昼飯時にビルから這い出る人々がゾンビのように輪郭がぼけて揺らいでいた。