作品を持ってUshiyamaが訪れる。夜な夜な下北沢で撮影を続けている、「人物の為の習作」というタイトルを冠した95x73mmの画像ポラ約100枚から、10枚を選んでもらって、それはこちらでプリントしてみることにする。フィルムのコンタクトもあったが、これは今回は使わない事にした。十代後半から二十代前半の街行く人間に声をかけ、同じ場所でほぼ同じ手法で対象を捉えているこの取り組みは、1000枚を目標として、現在300枚ほどらしいが、枚数が問題ではないかもしれないと眺めながら考えていた。「サウザンドステップス」。吉増剛造の声。街頭での見知らぬ人間からの撮影させてくれという唐突な申し出に、意外なほど断る人間は少ないらしい。皆、ストレートにカメラに自身を曝している。Ushiyamaの人間性がそう促すのだろうが、アルバイトや仕事、中には遊び帰りの若者の1日を終わらせる倦怠と、しかしその裏腹にある夜へ惹き込まれていくような表情には、何かを隠すような秘密めいた自己装飾がないのが、現代的であると感じるのだった。今回のプロジェクトで併置するono君の家庭をそのまま撮影する姿勢と、対象は異なるが、対象への眼差しに似たものがある。創作が、何かを強引につくりあげるということと違って、態度の表明であると思うことが、こういった作品を眺めると確信に近付く。だから、できるだけ、そのままぽいっと置くことに専念できればいい。丑山作品 / 小野君の今年の年賀状