ぼろぼろですよと電話で話していた竹之内が夕方訪れ、事の顛末を話してくれた。彼女に「puppy(子犬)」のように学校に捨てられたと話す竹之内に次女がすかさず「子犬じゃない」とつっこんだ。二か月間学校(慶応義塾大学院)の教室で寝袋で過ごしたという。妻も次女にならって自業自得と言い切ったが、それでもようやく秋になって湘南に部屋を借り、食事でも作ろうかという気になったと聞いて、話だけでは伝わらない細部に潜む、壮絶な(?)光景の幾つかかを大袈裟に想像したくなった。こちらも久しぶりのビールで簡単に酔いが巡ったからだった。
とにかくドクターをとってしまえと話はそこで落ち着いた。互いの近況の中で竹之内が話した、テラガキタカシという人の、ドーナツレコードへの針の圧力を数十キロに加えることで、むしろレコード盤は削れずに、音は情報量の明確さを増して、音源までもが特定できるほどになるという意匠のエピソードは興味深かった。ICCで面白かった数十個の耳を体感させてくれた話の延長で加えられたものだったが、そんな所謂互いのささやかな栄養剤を並べながら、こちらは唐突に眠ってしまっていた。
熟睡を招くためのあれこれをそれから試した。