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いまあのころをふり返ると、自分がばらばらの断片として見えてくる。無数の戦いが同時に行われるなか、私のさまざまな部分が広大な戦場のあちこちに散らばり、そのめいめいが違う天使と、違う衝動と、自分はどういう人間なのかをめぐる違う思いと格闘していた。その結果として、自分の性格にまったくそぐわない行動に走ることもままあった。私は自分を自分でない何者かに変え、しばし別人の肌を身につけ、自分を再創造したと思い込むのだった。気難しい、黙想にふけりがちな気取り屋が、早口の醒めた皮肉屋に変貌する。本ばかり読んでいる、熱意のあり余ったインテリがにわかに方向転換し、ハーボ・マルクスを魂の父と仰ぐに至る。
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その日暮らしー若き日の失敗の記録 / トゥルー・ストーリーズ / P.Auster
膨大な時間と空間を過ごしてきた筈で、その都度さまざまな印象や気分が去来し、処理というより思いもしない反射的、生物学的な動きを意識の外で行い、後悔に対して、「今度は同じ過ちを繰り返さない」と学習したけれども、なかなか同じ事は繰り返さない。現在という極小の一点は、幼い頃の経験の無かった怯えた一点と何も変わりはない。そんなことを思いながら頁を捲っていた。
久しぶりに月よしで、無性に秋刀魚が喰いたくなり夕食を摂る。春雨サラダと卵だし巻き焼きと並べて、色彩はよかったが、卵焼きの分が腹には多すぎた。長野への土産が手荷物となって、大したことはないけれども、荷物も多いので今回は送ってしまおうとネットで花園饅頭のぬれ甘なっとを選ぶ。荷の隙間に、Greg Eganのディアスポラと万物理論を押し込む。早朝の早い新幹線に乗ってしまおうと決める。