あなたは母国に帰らないの?と女性が声をかけた。机の上に積み上げた本を指差して、とにかくこれだけの人間のことを具に調べていますと英語を交えたドイツ語で説明すると、あなたと同じような人は他にもいるわと、学習室に疎らに灯るスタンドを手元に集めるように両手を器の形にしてから、ウインクを添え、好きなだけどうぞと笑顔で肩をぽんとたたくのだった。トイレに立って、窓の外の夕闇が広がり、石組みの路面が物音を集めて反響する街並を眺め、無謀と諦めて反復の徹底をどこか足蹴にしていた語学に対して、こうして人を辿ることで、潔癖に戻すことはできる。音も聞こえ方が変わってきていると、妙な力が漲っていた。私の身体は若く、無垢で、今度ばかりは余計なものが落とされていると、タイムマシンで二度目の人生を生きるような静まりが目元に溢れていた。Dumme Durchsetzung, Glück der Wiederholungとノートの表紙にペンで書き、書きかけのEduard Mörike(1804-1875)の記述を再開していた。

迂闊に正月気分で観てしまったbiohazaqrd Degeneration / Makoto Kamiya のスクリプト(screenplay)に呆れる。グローバルマーケットを意識したらしいが、こんなもの大人が観るとでも思っているのだろうか?ゲームの作り手はゲームだけつくっていればよろしい。予感されていたと思われるデジタルメソッドが生み出す浅薄な幻影ボリュームの悪しき形態が象徴的に顕われてしまったというところか。脚本も演出もお話にならない。仮にこの表象に熱狂する支持層が膨れるとするならば、世界は形式化、保守化の傾向へどっと傾く。頭の悪いビジネスモデルを株のように転がす馬鹿が、ユーザーは喜ぶ筈とパッチワークの意見を折衷させて集まると、こうしたお寒いものばかりつくる。

映画とディズニーランドと勉強のスケジュールに悩む次女と、入れ替わりで長女が長野に来たのはよいが、早速同窓会とやらに出かけ、車で送迎。


An American Crime (2007) / Tommy O’Haver(1968~)
More Than 1000 Words(2006) / Solo Avital / Ziv Koren
7eventy 5ive(2007) / Brian Hooks(1973~),Deon Taylor
Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull(2008) / Steven Spielberg(1946~)
ひぐらしのなく頃に / Ataru Oikawa(1957~)

An American Crimeが非常に大きな収穫。Ellen Pageの力もあるが、この作品の意味すること、齎すものは測りきれない。今年はこの作品が身体から離れないだろう。